2016年12月20日 (火)

第543回 ウツギ(空木)

 eoblog社のブログサービスが2017.03.31で終了することになりました。そのため、2006年から続けてきた「花また花」は、とりあえずこれが最後になります。来春頃から、他社のブログへ引っ越して再開したいと思っています。

 アーカイブの引っ越しは上手く出来ませんでしたが、暖かくなったら以下のURLで、「花また花」を再開する予定です。(3月26日)
       http://  hanamatahana.seesaa.net/



20161218_171107851



 丘陵地の日当たりのよい道端で、ウツギの果実が鈴生りになっていました。(
2016.12.18 兵庫県宝塚市)





20160519_141603959 ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木で、根元から株立ちし、高さ1~3mくらいになります。
 北海道~九州に広く分布し、日当たりのよい山野の川沿いや林縁などで見られます。


     (
2016.05.19 宝塚市)


20160305_135539336




 古くなった樹皮は灰褐色で、薄く剥げ落ちます。(
2016.03.05 宝塚市)





20160607_75809612_2

 枝には髄はあるものの、すぐ中空になるようです。
 これらは樹皮から判断すると、昨年あるいはそれ以前に伐採されたものと思われますが、大きな穴が開いています。(
2016.03.05 宝塚市)


20160519_131430357




 若い枝は赤褐色で、星状毛が密生しています。(
2016.05.19 宝塚市)





P4170711





 葉は対生します。(
2016.05.13 宝塚市)






P4170707



 葉身は長さ4~9㎝・幅
2.53.5㎝の卵状披針形で、先は細く尖ります。(2016.05.13 宝塚市)





P4170702




 葉の周囲には微細な鋸歯があります。(
2016.05.13 宝塚市)






P4170705




 葉の両面に星状毛があり、触るとざらつきます。(
2016.05.13 宝塚市)





P4180526



 5~6月頃、枝先に円錐花序を出し、白い花を多数下向きに咲かせます。(
2016.05.19 宝塚市)





20160514_130043583




 花は平開せず、直径約1㎝の鐘状になります。(
2016.05.13 宝塚市)





P4170684



 花弁の縁は、不同で微細な鋸歯状になっています。(
2016.05.13 宝塚市)






P4180178




 雄しべは長短各5個、合計
10個あります。(2016.05.19 宝塚市)





P4170574

 雄しべの花糸は、両側に翼があり、上部で横に突出します。花糸の頂部は細く突き出て、その先端に黄色の葯をつけます。
 まるで両手を広げた人形のようです。(
2016.05.13 宝塚市)


P4170636_2 雌しべの花柱は、長い雄しべよりもやや長く、花弁とほぼ同長くらいで、3個あるいは4個あります。
 子房下位で、雌しべの子房は萼内にあります。(
2016.05.13 宝塚市)


P4180134 雄しべの一部を除去した姿です。花床の上に、リング状になった橙色の腺体(と思われる)があり、雌しべの花柱はその内側から伸び、雄しべの花糸は外側から伸びています。(2016.05.19 宝塚市)


20160523_85754347


 花が終わると上を向き、花弁が脱落しても花柱は残っています。既述のとおり、花柱は3個あるいは4個あります。(
2016.05.22 宝塚市)




P4210474




 果実は萼筒内で成長します。まだ花柱が残っています。(
2016.07.22 宝塚市)





P4240966


 果実は
1011月頃に成熟し、茶褐色になります。花柱はまだ残っており、腺体の名残も認められます。(2016.10.16 宝塚市)




20161031_153611024

 果実は直径5.66.3㎜・高さ4.04.3㎜(測定例)のお椀形の蒴果で、下部が3裂あるいは4裂して種子をこぼします。この頃も花柱は残っています。(2016.10.31 宝塚市)



P4250821 下部が4裂した果実を二つに割った姿です。
 果皮は木質で厚く、とても堅いものです。
 中央の空洞部に種子が入りますが、その数は未確認です。(
2016.11.01 撮影)


20161101_115315954


 種子は長さ
1.52.1㎜の薄片状で、風に飛ばされ易くなっています。
 表面には隆起した縦の筋があります。(
2016.11.01 撮影)




P4110241



 種子をこぼしても、果実は花柱をつけたまま年を越し、早春のころまで残っています。(
2016.03.05 宝塚市)






 和名は、枝がすぐ中空になることに由来します。ウノハナ(卯の花)という別名もありますが、これは旧暦卯月の頃(新暦5月上旬~6月上旬)に花が咲くことに依ります。明治
28年(1896)に発表された唱歌「夏は来ぬ」(佐々木信綱 作詞、小山作之助 作曲)では、次のように歌われています。

       卯(う)の花の 匂う垣根に
       時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
       忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ


20160601_140748302



 直径
4.5㎜の今年枝を鋏で切断したところ、約2㎜の穴が開いていました。(2016.06.01 宝塚市)






 

 学名は
Deutzia crenataです。属名のDeutziaは、植物分類学の祖といわれるスウェーデン人リンネの教えを受けたツュンベルク(C. P. Thunberg  17431828)が命名しました。オランダの植物愛好家で、彼の植物採集旅行の後援者の一人でもあったJohan van der Deutz17431784)への献名です。

 因みに、ツュンベルクは、オランダ商館医として
1775年に来日しており、後日出版した「日本植物誌」で、日本の植物をヨーロッパに広く紹介しました。


 種小名の
crenataはラテン語crenatusの女性形容詞で、「円鋸歯状の、波形に縁取られた」という意味合いです。


P4170695




 葉の周囲をよく見ると、円弧が波のように連続しています。(
2016.05.13 宝塚市)









2016年12月14日 (水)

第542回 ナンバンギセル(南蛮煙管) その2

 

P4260537


 土手に生い茂るススキの根元をかき分け、枯葉を取り除くとナンバンギセル(南蛮煙管)が立っていました。(
2016.12.12 神戸市北区)




20160925_200545188 ハマウツボ科ナンバンギセル属の1年生の寄生植物で、葉緑素を持たないので光合成が出来ません。
 ススキ、ミョウガ、サトウキビなどの宿主に寄生し、宿主の根から養分を吸収して生育します。

 日本全土に分布しており、中国・東南アジア・インドなどでも見られるようです。(
2016.09.24 神戸市北区)


20161001_85741705




 直立して茎のように見えるのは花柄です。(
2016.09.30 神戸市北区)





20161114_72631063 茎はごく短く、ほとんど地上には出ません。
 葉は茎と同じ淡い黄褐色、または赤褐色で、ほとんど土に覆われています。形状は先が尖った長卵形の鱗片状で、互生します。


   (
2016.09.24 神戸市北区)


20161114_73948802 茎から高さ1020㎝ほどの花柄を1~5本くらい伸ばし、その先に花を1個ずつつけます。
 花冠は長さ3~4
㎝ほどの淡紅紫色の太い筒形で、横向き~やや下向きに咲きます。     
 萼は長さ
1.5~3㎝ほどの黄褐色の筒形で、淡紅紫色の筋が疎らにあります。(2016.09.24 神戸市北区)


20160925_194338010_2



 萼の先は尖り、下側は花冠が曲がり易いように深く裂けています。(
2016.09.24 神戸市北区)





P4230704 花冠を正面から見た姿です。花冠の先は浅く5裂して唇形になっています。上唇は2裂し、花冠内面は濃い紅紫色です。下唇は3裂し、内面は白みを帯びた淡い紅紫色です。
 全ての花が濃淡のツートーンカラーではないようで、関連記事の第
171回(2007.09.20)で紹介したものは、淡い紅紫色だけでした。(2016.09.24 神戸市北区)


20160925_175734434 萼を除去した花冠の姿です。
 花冠の折れ曲がり部は細くなり、基部は楕円体になっています。
 基部の色は紅紫色が濃く、先になるほど薄くなり、先端部はまた少し濃くなっています。

   (
2016.09.24 神戸市北区)


20161121_94015053 花冠の中ほどまで破ってみました。
 黄色の柱頭をつけた雌しべと、白い葯をつけた雄しべが出てきました。
 花冠の底には透明の粘液が溜まっており、花冠を傾けると流れ出てきました。

                 (
2016.09.24 神戸市北区)


P4230764


 雌しべの子房は淡黄色で、らっきょうのような卵球形をしています。子房から白い花柱が伸び、柱頭は黄色の大きな扁球形をしています。(
2016.09.24 神戸市北区)



P4230767

 柱頭には毛が密生しています。因みに、図鑑では「黄色の毛が密生している」と説明されています。ごく細い毛なので、白く写っいるのでしょうか。(2016.09.24 神戸市北区)



P4230776


 雌しべを除去した姿です。この写真では、4個の白い葯と3個の紅紫色の花糸しか確認できませんが、雄しべは4個あります。(
2016.09.24 神戸市北区)



P4230782


 2個の花糸を、花冠から切り離した姿です。4個の葯は合着しており、2個を切り離しても雄しべは落下しません。(
2016.09.24 神戸市北区)




P4250357


 花後、果実は萼内で
1112月頃成熟します。
 花冠がしおれ、果実部が変色してきましたが、花柄はまだしっかりしています。(
2016.10.20 神戸市北区)



20161022_85041844


 採取した果実を割ってみました。
 まだ成熟しておらず中は橙色で微細な白い種子が多数入っていました。(
2016.10.20 神戸市北区)




P4260019




 花柄も枯れ、黒みを帯びてきました。(
2016.11.12 神戸市北区)






20161121_112041472




 採取した果実は全体にしわだらけで、一部が裂けています。(
2016.11.12 神戸市北区)





20161112_160540533


 果実は長さ約
1.3㎝(測定例)の卵球形です。萼と果皮を破ると、微細な砂粒のような黄褐色の種子が多数入っていました。2016.11.12 神戸市北区)



P4260165 入っていた種子の一部です。中央部にある大きな種子は長さ2.7㎜(実測値)のキガンピ(ジンチョウゲ科キガンピ属の落葉低木)の種子です。
 
私のカメラではこれが限度で、種子の表面は明確ではありませんが、平滑でないことはわかります。種子は長さ0.150.2㎜(測定例)の楕円体です。(2016.11.13 撮影)


P4260170



 食卓円(伯方の塩)の結晶と比べてみました。種子は塩の結晶よりもはるかに小さいものです。(
2016.11.13 撮影)




20161125_103510865_2


 最大限まで切り取り拡大した写真です。少々ピンボケですが、種子の表面に網目模様が隆起しているのがわかります。(
2016.11.25 撮影)





 和名は、長い花柄の先に筒形の花をつける姿を、南蛮人が使う煙管に見立てたものです。

 古くは、下を向いて咲く花の姿から、うなだれて思いこんでいる様を連想し、オモイグサ(思い草)と呼ばれていたそうで、万葉集に作者不詳の歌が載っています。

    道の辺の、尾花が下の 思ひ草 
                  今さらさらに 何か思はむ

 
 「道端の尾花(ススキ)の下に咲く思い草(ナンバンギセル)のように、今さら何を思い悩みましょうか。一途にあなただけを思っています。」

 

 ナンバンギセルは、ハマウツボ科ナンバンギセル属の寄生植物の一種ですが、ハマウツボ科の一つにハマウツボ属もあります。


P1010084_2 これはハマウツボ属のヤセウツボ(痩靫)です。ハマウツボとよく似ていますが、全体にほっそりしています。
 ヨーロッパから北アフリカ原産の帰化植物で、マメ科、セリ科、キク科などの植物の根に寄生します。(ヤセウツボ:
2002.05.02 小石川植物園/東京都文京区)



 学名は
Aeginetia indica Linn.です。属名は7世紀のギリシャの医師P.Aeginetaに由来するようですが、彼の詳細は不明です。

 種小名
indicaは「インドの、インド産の」という意味です。命名者のリンネ「植物分類学の祖と呼ばれるスウェーデンの植物学者
Carl Linne 17071778 )」が使用した標本が、インド産ナンバンギセルから作られたものだったと思われます。





関連記事
171回(2007.09.20) ナンバンギセル




2016年12月 6日 (火)

第541回 ノイバラ(野茨)

 

P4260457

 鈴生りの果実をつけていた道端のノイバラ(野茨)は、ほとんど果実を失ってしまいました。鳥に食べられたのだろうか、それとも完熟して落下したのだろうか。(2016.12.02 兵庫県宝塚市)



P4170300_2

 バラ科バラ属の落葉低木で、高さ2mくらいになります。
 北海道~九州の日当たりのよい林縁、河原、原野などでふつうに見られますが、沖縄にはないようです。(
2016.05.13 宝塚市)


20161124_141548723




 茎は自立し、よく分枝します。(
2016.11.24 宝塚市)






P4260353_2
 茎や枝の樹皮は、生育環境や古さによって異なるようですが、ふつう古いものほど褐色を帯びるようです。(
2016.11.26 宝塚市)




P4170324


 今年伸びた新枝は鮮やかな緑色です。(
2016.05.13 宝塚市)






P4260331


  茎や枝には鉤状の鋭い刺があります。(
2016.11.26 宝塚市)






P4170317



 葉は長さ
10㎝くらいになる奇数羽状複葉で、互生します。側小葉は3~4対あります。(2016.05.13 宝塚市)




P4170319 頂小葉は側小葉より少し大形です。
 小葉は長さ2~5㎝の卵形または長
楕円形で、先はやや尖り、縁には鋭い鋸歯があります。表面は葉脈が窪み、しわがあるように見え、光沢はありません。

     (
2016.05.13 宝塚市)


P4170320




 葉の裏面は黄緑色を帯び、軟毛が生えています。(
2016.05.13 宝塚市)





P4190059 花が終わったばかりなのに、もう実が熟れてきたのかと思ったら、葉に寄生した虫瘤でした。
 直径は1㎝ほどで、中にはバラハタマバチ(薔薇葉玉蜂)の幼虫が入っているようです。


     (
2016.05.29 宝塚市)


20160618_164303716
 葉柄の基部には合着した托葉があります。全長1㎝くらいで、縁は櫛の歯のように深く切れ込んでいます。(
2016.06.18 宝塚市)




20160618_162556863



 托葉の反対面です。全体に腺毛が生え、裂片の先も腺になっています。(
2016.06.18 宝塚市)





20161130_91222807



 5~6月頃、枝先に円錐花序をつけ、芳香のある白い花を多数咲かせます。(
2006.05.15 宝塚市)





P5080017



 花は直径約2㎝の5弁花で、花弁の先は窪みます。(
2005.05.08 宝塚市)






P4170306




 雄しべは黄色で、多数あります。(
2016.05.13 宝塚市)






P4180376



 確認はしていませんが、この写真から雌しべは6個あるように思えます。(
2016.05.19 宝塚市)





20160519_142240795



 雌しべの花柱は無毛で、下部から中ほどまでは合着して一体になり
、直立します。(2016.05.19 宝塚市)




20161115_114842518



 萼は萼筒とその先の5裂片からなり、萼筒は壺状で、裂片は広披針形です。(
2016.05.29 宝塚市)





P4210294





 花後、萼筒が肥大します。(
2016.07.14 宝塚市)





20161031_141446297 果実のように見えるのは、萼筒が肥大して液果状になった偽果で、バラ状果というそうです、9~11月頃に赤くなります。 
 偽果は直径
5.78.7㎜・高さ6.38.8㎜(測定例)の卵球形です。

     (
2016.10.31 宝塚市)


P4250858 直径8.7㎜の偽果を割ってみると、直毛が混じる赤い果肉状のものに包まれ、淡黄褐色の痩果が14個入っていました。痩果の数は。ふつう5~12個くらいのようです。(2016.11.01 撮影)


P4250866 偽果から取り出したままの痩果で、直毛がついています。この直毛は、痩果に生えているのでしょうか、それとも単に付着しているのでしょうか2016.11.01 撮影)



20161101_100941364
 擦りながら水洗いした痩果です。直毛は取れてしまいました。痩果の長さは
3.94.3㎜(測定値)で、形状は変化に富んでいます。(2016.11.01 撮影)



P4260387


 再度、直径
7.3㎜の偽果を割ってみると、11個の痩果が入っており、やはり直毛がついていました。(2016.11.28 撮影)




20161129_72437483

 擦らずに水洗いした痩果です。
 直毛が残っているので、直毛は痩果に生えているのだと思われます。直毛の長さは2~3㎜(ルーペでの実測例)くらいです。(
2016.11.28 撮影)




 和名は、野に咲くイバラを意味し、イバラとは「刺のある小木あるいは野生のバラ類の総称」です。従って、ノイバラにはノバラという別名があります。

 先日NHKを観ていたら、世界には4万種くらいのバラがあるが、高々
200年くらい前から品種改良を重ねて作り上げたものだと説明されていました。それらの原種は8種類で、その内の2種類は日本のノイバラとハマナスだそうです。

 ノイバラは小花を多数つけるので、庭園のアーチ用などに改良されたそうです。ハマナスは耐寒性があるので、この系統のものはヨーロッパの寒い地域で広く根付いているそうです。


P6100110 ハマナス(浜茄子)は別名ハマナシ(浜梨)とも呼び、6~8月頃、直径5~8㎝の大きな花を咲かせます。花は紅色または紅紫色の5弁花です。(2001.06.10 葛西臨海公園/東京都江戸川区)


P1010167


 ハマナスの偽果は直径2~3㎝の大きな扁球形で、先端には萼片が残っており、8~9月頃に赤く熟します。(
2002.08.26 北海道苫小牧)





 学名は
Rosa multifloraで、属名のRosaは、百花瞭然(属名解説)では「女性名詞。バラに対するラテン古名、さらに遡ればギシャ語のrhodon(バラ)で、ケルト語のrhodd(赤色)に由来する。」と説明されています。

 種小名の
multifloraは、
ラテン語のmulti(多い)+florus(花の多い)からなる女性形容詞(属名の性と一致させる)で、「多花の、多くの花をもつ」という意味合いで、ノイバラが多数の花を咲かせる種であることを表しています。


 因みに
Flora(フローラ)は、ローマ神話に登場し春に植物を開花させる花の女神です。彼女はもとギリシャ神話に登場するニンフであったが、西風の神ゼフュロスにさらわれてその妻となり、花の女神の職分を与えられました。

 あるとき、彼女は触れただけで妊娠する花をユノに与えました。その結果ユノは、ユピテルの種によらずマルスを生みました。それ以来、春の最初の月をマルス(3月)という名で呼ぶことになったそうです。

ニンフ:美しい乙女の姿をした山川草木の精。

ユノ
(ジュノー):ローマ神話のジュピター(ユピテルの妻。最高の女神で、女性と結婚生活の保護者。

ユピテル(ジュピター):ギリシャ神話のゼウスと同一視されるローマ神話の最高神。

マルス(マース):ギリシャ神話のアレスと同一視されるローマ神話における軍神。




2016年11月24日 (木)

第540回 コナギ(小菜葱)

 

P4260092


  花も果実も終わってしまいましたが、田の隅でわずかに残っているコナギ(小菜葱)を見つけました。(
2016.11.12 神戸市北区)




20080918_132914079 水田や池畔など湿地に生える1年草で、本州~沖縄で見られます。
 原産地は東南アジアで、有史以前に稲作に伴って渡来したといわれ、日本書紀や万葉集にも載っているようです。

       (
2008.09.17 神戸市北区)


P4240603



 根元から短い茎を四方に広げ、斜めに立ち上がって高さ5~
25㎝くらいになります。(2016.10.07 神戸市北区)




P4220482 茎から長い葉柄を伸ばし、その先に1枚の葉をつけます。
 葉は無毛で、光沢があります。発芽して間もない個体の葉は細長いが、成葉は長さ
2.5~6㎝・幅0.7~4㎝(測定例)の広披針形~卵心形で、変化が多く見られます。  
   (
2016.08.23 神戸市北区)


20161007_142132039

 8~10月頃、鞘状になった葉柄の腋から総状花序を出し、直径1.5~2㎝の青紫色の花を咲かせます。
 確認したかぎりでは、花序には2~5個の花がありました。


                 (
2016.10.07 神戸市北区)


P4240414




 花序は短く、葉よりも低い位置にあります。(
2016.10.07 神戸市北区)





20161028_114421294 花が近接しているせいか、ほとんどの花は平開せず、半開き状態になります。花被片は、内花被片3個と外花被片3個で、合計6個あります。(2016.10.07 神戸市北区)



20161017_73855229


 雌しべの子房は黄緑色の卵球形で、乳白色半透明の花柱が1個伸び、柱頭は触手を伸ばした磯巾着のように開いています。(
2016.10.07 神戸市北区)



20161007_160135163

 


 雄しべには、青紫色の大きな葯をつけた長い雄しべが1個と、黄色の葯をつけた短い雄しべが3個あります。(
2016.10.07 神戸市北区)




20161017_74646506


 長い雄しべの花糸は太く、上部で二又に分かれ、一方の先には葯がつき、他方は突起状になります。(
2016.10.07 神戸市北区)




P4240480

 




 花が終わった花序は下を向き、果実を結びます。(
2016.10.07 神戸市北区)





20160924_161601443


 大きくなった果実です。果実は、成熟すると裂開して種子をこぼす蒴果で、先端には花柱が残っています。(
2016.09.24 神戸市北区)




20160926_135751776



 採取した果序です。果実は、色あせた6個の花被片に包まれています。(
2016.09.26 撮影)





P4230892


 果実は長さ
9.811.6㎜・直径5.06.5㎜(測定例)の楕円体で、断面はやや三角形を帯び、先端部はやや尖ります。(2016.09.26 撮影)



P4230898




 果実には縦の裂け目が3本あり、そこから裂開します。(
2016.09.26 撮影)





P4240506_2



 成熟前の果実を横割りしてみました。米粒のような細かい種子が多数入っていました。(
2016.10.07 神戸市北区)




20161007_144254094


 種子の大半を除去した姿です。果実は3室に分かれ、部屋は黄緑色を帯びた隔膜で仕切られています。(
2016.10.07 神戸市北区)




20161029_92011584


 採取した後に自然裂開し、種子をこぼした果実です。果皮から分離した隔膜は、半透明の緑色ガラスのようです。(
2016.09.26 撮影)




20160928_75908318

 種子は長さ0.80.9㎜・直径0.350.4㎜(測定例)の楕円体で、片端には小さな突起があり、縦方向には隆起した筋が10本くらいあります。(2016.09.27 撮影)




 和名は、小さなナギを意味します。ナギはミズアオイ(水葵)の古名です。漢字から分かるように、コナギ(小菜葱)もナギ(菜葱)も昔は食用にしていました。


 学名は
Monochoria vaginalis var. plantagineaです。百花瞭然(属名解説)によると、「属名はギリシャ語のmonos(単)+chorizo(離す)からなる語。雄蕊(ゆぅずい)の一本が二又になって一葯が離れているためならん」と解説されています。

  しかし、ラテン語に由来すると考えると、
mono(一つであることを意味する接頭語)+chorizo(踊る)
 からなる合成語で、「一人で社交ダンスを踊っている姿を表している」のではないかと思います。


20161112_80936357 これは既出の写真を右に傾けたもので、二又に分かれた長い雄しべの一方にある葯を人間の頭部、もう一方を伸ばした腕だと考えると、一人で社交ダンスを踊っている姿が浮かんできます。

    (
2016.10.07 神戸市北区)



 種小名の
vaginalisは、ラテン語vagina(剣の鞘、膣など)の形容詞で、ここでは「葉鞘がある」という意味合いです。var.varietas(変種)の略です。

 
plantagineaは「オオバコ(大葉子 plantago)のような」という意味です。果実の形状が似ていることを表していると思われます。


P6020054


 オオバコは、日当たりのよい道端や荒れ地などで普通に見られるオオバコ科オオバコ属の多年草です。(
2001.06.02 東京都国分寺市)




20161010_161531575
 オオバコの果実は長さ約5㎜で、成熟すると上部が蓋のように離脱して種子をこぼす蓋果(がいか)です。形状はコナギの果実と同様に楕円体で、先端部はやや尖ります。


  (オオバコ:
2016.10.10  宝塚市)





関連記事
538回(2016.10.27) アメリカコナギ